仮面家族、映画『蛇イチゴ』

     西村美和脚本・監督映画『蛇イチゴ』(2003年公開)を観た。仮面家族の描き方がうまい。おすすめ。
     笑福亭松之助。ボケ老人役。深刻になり過ぎない、暗くなり過ぎないキャスティングと演技。バランスが取れている感じ。
     手塚とおるが加わっての五人の食事風景。意図的に、笑福亭が見きれる画面構成。非常に面白い。四人の気まずい雰囲気だけで、笑福亭の行動を想像させてしまう。ここは、腕あるなあ。
     平泉成、快活明朗な父親役。と、思わせておいて、人がいなくなってから陰口を叩く。昔の会社関係者から借金を重ねている。会社を首になったことを家族に伝えてない。など、裏側の顔が徐々に見えてくる。
     家族のために甲斐甲斐しく働く大谷直子。けど、実は、不満を腹に溜め込んでいて頭にハゲができている。笑福亭の死にも関係していて。とまあ、家族団欒のはずが、それは表面的であることが徐々に明かされていく。ここが、味付け次第でホラーにもサスペンスにもなる感じで、実に手練。
     で、この家族と並行しながら、告別式に紛れ込んでは香典を盗んでいく宮迫博之が描かれる。一癖ありそうな感じや口八丁な感じなど無難にこなしている。
     で、平泉の家と宮迫は実は関係があって、その出会い方も実に自然でうまい。いやはや、このあたり、脚本がよく練りこまれている。
     笑福亭の葬式シーン。棺桶の中の笑福亭、目が薄目を開けている。喪服姿のつみきみほ、手で笑福亭の目を閉じさせる。また開く。また閉じさせる。ちゃんと映画的な笑いになっている。その後、ドタバタが起きて、棺桶落ちる。松之助の顔がお棺からはみ出す。不謹慎ギャグでここも笑える。笑福亭を起用した意味がここでわかる。
     総福亭が死んで後、喪服の大谷が多弁になっている。それを見てつみきが「どうしてそんなに生き生きしているの?」。うーん、結構怖いセリフ。
     つみきみほ、これまで見た映画の中で最も役にあっている感じ。宮迫を信じるべきかどうかに揺れている感じを非常にうまく演じている。
     映画ラストは、一応、希望があり信頼をつなぎとめるエピソードにはなっている。けど、映画全体としては、普通の家族の中の裏表が実に丹念に描かれていて、怖い映画として見ることもできる。
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    グブリー川平(かびら)
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