テレビで散々やり尽くしているのに今更、映画『大日本人』

     松本人志監督映画『大日本人』(2007年公開)を観た。恐ろしく退屈な上つまらない。
     バスの中の松本人志。カメラに映らない人物が質問しいて、それに答える松本。踏切、商店街、コンビニ、団地の横、庭の荒れた一軒家。部屋の中でもインタビューが続く。テレビでよくある密着風の作り。8分を過ぎて飽き飽きして眠くなったころ、目をさますような出来事が。だけど、それだけ。二度同じことが起きたあたりでタイトルどーん。タブラに日本的な琴?のメロを乗せる曲は良い。
     周りの関係者やテレビ?視聴者へのインタビューなどから、テレビ制作と内容、視聴率、スポンサーなどへの批判めいた事を言っているようなのだけど、実につまらない。別に、映画でやるほどのことなんだろうか。それに、延々と流れるインタビューを受けているという演技をしている松本の姿を一体誰が見たいのだろう。
     特撮部分で少し良い所もある。不気味かわいいキャラはあまり観たことがない。ただ、アクションやギャグに見るべきものはない。
     北朝鮮風女によるニュース。あの独特な読みをする女史をギャグにするのはありがちだけど、背景をブルーバックにしている点は良かった。検閲のために北朝鮮で生放送はないと言われているので。
     ラストは胸クソが悪くなるほどひどい。「ここからは実写映像で御覧ください」と字幕が出る。スタジオできぐるみを着た五人のキャラクターが出てきて赤鬼風を倒すことになる。抵抗できないものを寄ってたかっていじめているようにしか見えない。キャラもこれまで出てきた怪物たちとは何の関係もないし。お笑い芸人たちの心のダークな部分が映像ににじみ出ている。

    アニメ『千年女優』と見比べるといい、映画『なぞの転校生』

     小中和哉監督映画『なぞの転校生』(1998年公開)を観た。見てもいいし見なくてもいい。
     NHKの「BSアニメ夜話」でアニメ映画『千年女優』(2014/3/29掲載)を取り上げていた。番組ゲストとして脚本家の村井さだゆきと映画監督の山本晋也が出ていて、アニメと実写の虚構内虚構の表現の違いやできることできないことを語っていて非常に面白かった。のだけど、なぜ実写だと難しいのかがいまいちわからなかった。
     と、そんな時に村井の脚本の映画を見てみようと選んだのが今回の『なぞの転校生』。
     出来はというと、かなり悪い。
     まず、新山千春が女子高生な上に能力者。タレントにそんなに背負わせて大丈夫かあ、と思ってしまう。配役で失敗気味。
     高校の授業で量子論。ハイゼンベルクの不確定性原理とか、コペンハーゲン解釈とか、いやはや、高校の授業のレベルの高いこと。
     団地の近くの広い草むらの空き地。新山と佐藤康恵の二人が別世界に飛ぶことに。カメラが二人の周りをぐるぐるまわり飛んだことになる。場面が変わると、部屋の中。二人でだべっている。あの~、別の世界に飛んだんだよねえ。その違いとか驚きとか、何で何も変わらないのとか、もう少し驚こうよ。
     地下世界がしょぼい。コントロールセンターから怪電波が出ているようでそれを防ぐためのヘッドホンがあるんだけどこのデザインが酷い。ゴミをくっつけた感じ。地下の塹壕から宇宙船みたいな城と呼ばれる場所に地下通路みたいなところを歩くんだけど、何故か女二人だけが行くことに。まあ、能力者ということなのかもしれないけど、男たちは地下で何をしているんでしょうか。
     映像表現では、ひまわり畑のシーンが合成感ありあり。部屋の照明が非常に暗い。意図的にやっているのはわかるけど不自然。教室、廊下、図書室、校舎の前、野外だと花屋前と橋の上、と撮影場所が限られていて広がりが感じられない。後半に繁華街での撮影があるけど、周りの通行人が新山と佐藤をジロジロ見ていて興ざめ。
     宝井誠明が結局ハサミ男。「ハサミ男が出ると駄作になる」は邦画の必要十分条件。
     ラスト、新山、佐藤、宝井の能力者三人が集まっていることが世界崩壊を招いているとして、別れ別れになることに。新山泣き出す。うーん、なんで泣くんだ?それほど三人友達だったけ。だって新山、宝井の秘密、妻夫木聡に指摘されて思い出したよね(完全にあとづけ)。
     とまあ、出来はかなり下の方なんだけど、この映画には別な価値がある。
     『なぞの転校生』は場面転換によって別世界へ移動するという映像表現が頻繁に出てくる。地下壕からドアを開けると東京の夜の繁華街、とかね。実はこれ『千年女優』の手法と非常によく似ていて、比較対象として好都合。「BSアニメ夜話」で村井と山本が語っていたアニメに出来て実写で難しい表現を実際に目で見て比較できる。
     場面転換の妙といえばアニメ映画『パプリカ』(2014/4/11掲載)も素晴らしい。サイトDNA(Daily News Agency)に「Satoshi kon - Editing Space & Time」という今敏の場面転換技術を解説している動画がある。「アニメならでは」の表現が取り上げられている。
    プロフィール

    FC2USER172171IPA

    グブリー川平(かびら)
    おすすめ映画の紹介は
    毎月15日と末日
    【使用機材】
    プロジェクター BenQ HT2550M
    スクリーン ファーストスクリーン MB-80W(ビーズ)
    ヘッドフォン BOSE Quiet Comfort 25
    ビデオプレーヤー Amazon Fire TV(第3世代、4K Ultra HD(最大60fps)対応)
    YAMAHA電子ピアノ P-125aB
    ポータブル電源 BLUETTI EB3A、ALLPOWERS R600

    最新記事
    カテゴリ
    月別アーカイブ
    検索フォーム
    RSSリンクの表示