2014年05月後半観たおすすめ邦画

2014年05月後半観たおすすめ邦画
 今月からおすすめ邦画を前半(5/15紹介済み)と後半に分けている。後半観た邦画は29本。

『ハッピーフライト』監督矢口史靖、2008年公開、5/25掲載
 下調べ調査取材が映像にそのまま生きていることが一目でわかる。前半部の航空空港業務の説明と、後半部の緊急事態への対処によって、群像劇と大団円が見事に収斂。矢口史靖、腕あるなあ。

『鬼婆』監督新藤兼人、1964年公開、5/31掲載
 月末に滑りこんできたすごい作品。女の情念が描かれているとしか言えない。うまい俳優と場所さえあれば映画監督というのは映像を生み出せてしまうんだあ、と感心させられる。なぜ今の邦画はこういう映画が撮れないのだろう?ほんとうに不思議だ。

『西陣心中』監督高林陽一、1977年公開、5/21掲載
 これがSFだったら、と発想が触発される映像とラスト。セックスマシーンゆみちゃんは絶対に三池崇史などによってリメイクされるべき。

『その男、凶暴につき』監督北野武、1989年公開、5/24掲載
 これまで坂上忍、大友克洋、宮本亜門と初映画監督作品をいくつか見てきた。その特徴は、イメージ映像の羅列ばかりで、物語をけん引する映像がなかった。けれど、北野は違う。
 映画冒頭での性格描写、冷徹な暴力描写、性格設定とラストへの展開も内包した徒歩シーン。うーむ、うなるねえ。

『タイム・リープ』監督今関あきよし、1997年公開、5/30掲載
 手練というのがもっとも当てはまる表現だと思う。つじつまの合わない物語をつじつまが合っているように見せる手腕はさすが。それでいて、犯罪と恋愛が絡み、ちゃんと達成感もある。音楽と映像の掛け合いも見もの。

『デビルマン』監督那須博之、2004年公開、5/24掲載
 噂通りの駄作。こんなことすると、こんな撮り方すると、こんな演技すると、こんな役者使うと、こんな物語を書くと、超有名な原作を映画化すると、、映画でやってはいけない特集といえる素晴らしい出来栄え。映画界の失敗作一里塚として貴重な作品。必見!

ジリジリした女の性欲の表現が素晴らしい、映画『鬼婆』

 まったく偶然見ることになった新藤兼人監督映画『鬼婆』(1964年公開)。
 戦国時代?草地を甲冑を着た男二人。えー、なんで?どういうこと?すごい出だし。会話の全くないシステマチックに進む作業。乙羽信子なのかあ、あまりの異形に気づかなかった。『砂の女』に負けない女の情念とモノクロヌード。
 性欲にもんもんとする佐藤慶の仕草が笑える。
 時々挟まれる草葉の揺れるスローモーションとゆったりしたリズムのドラのSE。不思議な生命感。映画全体を包み込むジリジリした女の性欲表現が素晴らしい。
 あばら屋に住む老女と若い女。それを狙う男。老女は若い女を心配しているふりをしながら男女の仲を裂く。実は保身のためであり嫉妬でもある。男と若い女に対する立場の逆転が生まれる。実にうまい。
 その後、老女の身の上にある出来事が生じてエンディング。アクションはいまいちだけど、演出と素晴らしい演技でぐいぐい引き込む。彼女は跳べたのか?跳べなかったのか?
 草原、あばら屋2棟、登場人物ほぼ3人。たったこれだけの資材で、こんなに面白い物語を紡ぎ出せるとは、天才的。どうして今の邦画はこういう映画が撮れないのだろう?映像作家志望の若い人はぜひ!

優香へのいじめが足りない、映画『輪廻』

 恐怖映画ということで見てしまった清水崇監督映画『輪廻』(2006年公開)。
 関係性のわからない多数の登場人物が冒頭に出てくるので、少し混乱する。
 物語は、ある事件に全て収斂していく構造なのだが、その収斂の仕方が少し変わっている。映画製作だ。
 殺人現場となった廃墟のホテル、当時のホテル、映画セットとしてのホテル、さらに香里奈の視点によるホテル、現像されたフィルムに写るホテルと視点が多彩。かなり綱渡りのシナリオだけど、割合うまく処理されている。
 後半はゾンビのような展開になって、少し興が醒める。最後のちょっとしたすり替えが起こるのは、「そっちか!」と少し思う。けれど、他の人は整合性が多少あるのに優香だけ別というのは反則。
 優香は徐々に追い詰めれていく役をこなしている。追い詰められるのは精神的な部分だけで肉体的な責め苦はない。だから、恋愛もないし、濡れ場もないし、ヌードになる機会も全くない。清々しいほどない。映画の主題として肉体よりも精神らしい。
 『地獄でなぜ悪い』と同じように映画作りの面白さもあって興味深く最後まで見れるけど、輪廻だけにただそうなったとしか言えない出来事に説得性が乏しい。優香も肉体的責め苦を加えればもっとはっちゃけた演技が引き出せたはずなのに惜しいし、食い足りない。

時空間移動で犯人探し、映画『タイム・リープ』

 タイトルはチラチラと見かけるものの本編をなかなか見ることができなかった今関あきよし監督映画『タイム・リープ』(1997年公開)を観た。
 8ミリフィルムのような映像から始まる。退色してカクカクする4:3映像。ノイズや汚れもある。要所要所でこの映像効果が使われている。
 ケチャがサラウンドする。この音響効果も要所で使われる。映画中程で、ゴミを散らかした階段の場面。学校内の環境音がサラウンドする。
 佐藤藍子がすごいバカ設定。生死の判断をしない。現場を荒らす。演出のせいなのか表情がベタというか定型的。それとも演技が下手なのか。後半はかなり改善される。
 死体にラダック風というのかインドネシア風というのか、そういったアジア風俗を盛り込む演出は異色で素晴らしい。
 女が近づくとじん麻疹がでる川岡大次郎のキャラ設定は面白い。これが今後の恋愛の前振りになっているとは思いもよらなかった。小さい設定だけどちゃんと男の性格描写になっている。
 余貴美子が奇妙におかしい。
 前々から学園モノに違和感を覚えていたけど、その原因がわかった。それは生徒と教師の関係性なのだ。いまどきの学園映画が糞つまらないのは、この点だったんだ。『タイム・リープ』の学園内はまだ許容範囲で見続けることができる。
 音楽と編集の噛み合い方が独特。ベースを主体とした音楽からケチャへの移行など、映像としてどういう意味があるのかを観客にわからせる記号にちゃんとなっている(音楽千住明)。
 『時をかける少女』の亜流だろうと高をくくって見ていたら、犯人探しの展開に。これは予想できなかった。恋愛も成就して、と二つのストーリを時空間移動のテイストでけむにまく腕前は大林宣彦が監修を務めているためか手練で鮮やか。ただし、タイムトラベルだろうがタイムリープだろうが時空間移動を採用した物語全てに起こるタイムパラドックスが解決しているわけではないので物語としては破綻している。
 ラストは『地獄でなぜ悪い』と同じドキュメンタリー風で終わる。『タイム・リープ』においては無駄だと思う。

あの世の設定がダメな残念作、映画『スープ 生まれ変わりの物語』

 なんとなく見てしまった大塚祐吉監督映画『スープ 生まれ変わりの物語』(2012年公開)。
 思春期のクソガキがいる家庭周りが描写される。
 16分頃急にSF風。あの世の世界観が現実と違いがなく映像的な表現に乏しい。死んだ人物に感情移入もわかないし、おっさんと若い娘の不倫旅行にしか見えない。
 小西真奈美が高飛車な上司役。ヌードになるチャンスあるも脱ぎません。今の映画と女優はつまらない。
 出ました、つまらない映画にありがち、イメージ映像の羅列。やるならもっとはっちゃけてほしい。何度も霊に出して申し訳ないが『去年マリエンバートで』みたいなぐらいね(誤字はギャグです。あしからず)。
 父親が死んだら墓に花を手向けるって、表情と行動はクソガキだけど心はピュアって表現てことかなあ。笑止。邦画の中のガキの描き方は本当につまらない。
 80分過ぎてやっと生まれ変わりの物語に。ここから感情移入がぐっと高まる。まあ、これまで我慢して見てきた前振りがあるから面白くなるわけだけど、よく考えて見れば、父親は多少努力して目的達成しているわけだけど、他は殆ど何もしてないよねえ。娘だって過去と現実が描かれるだけだし。父親とかかわる連中は成り行きで生まれ変わっただけだし。生まれ変わりって難事業だと思っていたけど意外に楽そう。

大人の「桐島、部活やめるってよ」、映画『地獄でなぜ悪い』

 園子温といえば名作『冷たい熱帯魚』をすぐに想い出す。その園の新作となれば見なければなるまい。ということで映画『地獄でなぜ悪い』(2013年公開)を観た。
 物語としては大きく3つの集団が出てきて、各々の活動が舞台になる。それが合流し大団円を迎えるという構図になっている。
 だけどねえ、その映画の作りが判明するの60分頃なんだよねえ。それまでの前半部分を納得して見れるかどうか。正直言うと退屈だった。全部ひっくるめるとコメディ映画であり、ある意味目的達成群像劇でもあり、なんだが、「お約束」を共有できないと辛い。例えば、銃で撃たれたのにすぐ立ち上がるとか。
 光っていたのは長谷川博己。NHKドラマ「セカンドバージン」のイメージが強かっただけに、この映画の夢を諦めきれない映画監督役、後半部は、気狂い的なのりがこれまでの真面目なイメージを払拭していて驚いた。
 映画内映画という設定が一部面白かったのは、フィルムで撮り録音がテープという古いシステムを、最新のデジタル機材で映画にしているという、微妙に倒錯しているところ。最後の最後がほんの少しドキュメンタリータッチになるのもご愛嬌。
 映画の中に自己を映し込み始めたということは、日本の映画、本格的に疲弊し始めたのかな。

恐怖表現が稚拙、神代辰巳監督映画『地獄』

 中川信夫監督の『地獄』はすでに観たので、そのついでにということで観た神代辰巳監督映画『地獄』(1979年公開)。
 画面が黒いまま山崎ハコの歌が流れる。
 男女が山肌を駆け下りている。何者かに追われているよう。山小屋に逃げ込む男女。女は妊婦。追いかけてきた男が登場、田中邦衛だ。持っている猟銃風の銃身が異様に長い。女逃げるもトラバサミにかかる。田中の報告を聴いて、次の場面、現場に駆けつける岸田今日子。え?山小屋じゃなかったの?岸田、着物姿。どうやって山に来たのか?スタジオ撮影まるわかり。花は綺麗。女こと原田美枝子、断崖に引きずられる。特撮がすごい稚拙。このへんで、映画のクオリティが大体わかる。もしかしてトンデモかも。
 若い原田美枝子がよく脱ぐ。大きくて重そうな乳房に驚いた。入浴シーンでは、今の女優ではあまりみない肉感的な全裸が映る。
 20年後、急にカーレース。車のボンネットに生首が乗る。人形、まるわかり。何でレースなのか意味不明。
 電車の中で助けられた男の家が、岸田の家。偶然。いろいろ偶然が多い映画だなあ。原田だけヒルに食われる。ヒルの傷の治療を口実に原田を抱く男。すごい演出。
 原田を叩く棒がスチロールかゴム製。
 岸田はやっぱり演技がうまい。岸田が画面に写りこむだけで恐怖映像になる。
 急にがけ崩れ。山小屋大破壊。急に特撮風の映画になる。
 金田一シリーズのような日本の田舎の因習に縛られた暗い恐怖といった出だしもあるも、恐怖表現、特撮が稚拙すぎていちいち興ざめする。同じ男をたぶらかす『西陣心中』と見比べると完成度の違いは歴然。中川監督『地獄』と見比べても映像表現として稚拙さがわかる。何のためにリメイクしたのか。女版『地獄』のつもりなんだろうけど、個性派俳優動員しているのに、神代辰巳、腕ないなあ。

面白くはない異色ロードムービー、映画『KAMIKAZE TAXI』

 何で見るきになったのかそれすら忘れてしまった原田眞人脚本監督映画『KAMIKAZE TAXI』(1995年公開)。
 ブラジル二世へのインタビューから始まる。1994年の時代背景がニュース映像で説明される。
 ビデオレンタル店内部での男女の行動(演出)が奇妙。このテイストに耐えられるかどうかが、この映画を受け入れられるかどうかの分かれ目。邪魔で無駄だと思う。
 女の裸はよく出る。『北京原人 Who are you?』に出ていた片岡礼子はここでも脱ぎ要員。
 インディオの音楽がかかっている。ブラジル二世へのインタビューだったのになぜ?一応、後ほどペルー音楽だとわかるのだが、振りとしてのブラジル二世へのインタビューは何だったのか?
 慰安婦問題、特攻隊、外国人動労者、と政治テーマが映画の中のテレビで討論されている。
 花見のシーン以下の演出がつまらない。コミカルに演出する意味が理解できない。タクシードライバー役役所広司とチンピラ役高橋和也との会話で物語は成立しているのに、それ以外の無駄な演出はノイズでしかない。そのために140分もあるし。劇場公開は169分らしい。合掌。
 ミッキーカーチスと役所の出会いが偶然、その上、なにもしない。高橋を役所が川沿いで拾うのも偶然。すごく雑。
 温泉宿で自分の素性を独白する。たどたどしい日本語が観客の集中力を高める。なかなかうまい。
 太平洋戦争の愚行に原因があるラストの展開は読めなかった。だからといって面白いわけではない。高橋の演出が無駄。特にアクションが絡んだ突入シーンはもっとちゃんと真剣に作りこんでほしい。そこを削れば100分で行けるでしょう。おどけた演出はただただ邪魔。

悲恋、映画『牡丹燈籠』

 恐怖映画と思ってみてしまった山本薩夫監督映画『牡丹燈籠』(1968年公開)。
 武家屋敷で話し合われる縁談。主人公の結婚相手とされる菊の顔が怖い。幽霊よりも現実の女の顔の方が怖いという皮肉。
 物語は悠揚迫らぬゆったりとした展開。幽霊も非常に上品だ。幽霊にとりつかれた男をみんなでかくまって助けるという日本の昔話の王道。ただ、主人公は性格よし、品行方正ととりつかれたのが恨みではなくいい男だからというのがみそ。
 脇を固める俳優で物語のサブストーリーともなっている西村晃と小川眞由美の二人がうまい演技で映画に動きを与えている。70年代、時代劇などで小川をよく見かけていたというだけしか記憶に無いが、今見ると、実に演技が活き活きとしている。それでいて美人。彼女を見なおしてしまった。
 よく考えると、善人がバカを見るという内容かな、という薄っぺらさも感じていたが、ラストでちゃんと倫理的帳尻を合わせている。エンドロールが横スクロールする。珍しい。

超実験的、映画『地獄』

 恐怖映画ということで見ることになった中川信夫監督映画『地獄』(1960年公開)。
 恐怖というより、超実験的な映像に魂消(たまぎ)る。
 大学の講堂で学生服の男。受験の高校生か?高校生にしては老けているなあとミスキャストを笑うところだったが、当時は大学生も学生服を着ていたのだ。いやはや時代とは恐ろしいものだ。
 主人公は『東海道四谷怪談』の天知茂。うつむき加減でなかなか自己主張しない女に付きまとわれる性格設定は健在。ただ、時代劇でしかみかけなかったのでかなり戸惑った。
 大学の講堂が映っただけでもう映像的にすごい。奥行きを活かしたパースペクティブ。ライテイングと奥行きの深い映像だけで観客の視点を自在にコントロール。場面展開もうまい。黒澤ばりのモノクロに着色もある。
 アクションは今の眼からするといまいち。車の事故、橋の上の格闘、など映画耐性のない観客には「?」かもしれない。残酷シーンも舞台劇のよう。
 映画中盤、養老施設の場面あたりからはさすがに飽きてくる。あまりに実験的すぎて首を絞めるシーンは学芸会のよう。地獄のシーンはイメージ映像の連打。これぐらい徹底的にやれば、逆に清々しい。映像的挑戦をすべてぶち込んだ感じ。昔の映画が高画質でよみがえる、いい時代になったもんだ。

映画裁判
[被告人]
『ハサミ男』の監督池田敏春
『パーマネント野ばら』の監督吉田大八
[罪状]
小手先の映像技術に頼り、観客をその気にさせてその尻拭いを一切しな「いいるいる詐欺」罪
[判決]
有罪。両監督を無期(中川信夫監督映画『地獄』エンドレス再生して見続ける)懲役に処す。

期待しなければそこそこ、映画『K-20 怪人二十面相・伝』

 映画ランキングのサイトからの情報で見ることになった佐藤嗣麻子監督映画『K-20 怪人二十面相・伝』(2008年公開)。
 もしも日本が戦争に負けてなかったら、と始まるif物語。奇妙でレトロな飛行機が飛ぶ帝都。アニメを使った冒頭は音楽も含めスピード感がいい。
 話が進むにつれて、if世界はどこへやら。調度品、小道具大道具、別に普通に少し昔の日本を描いても良かったような映像に。異世界を描くなら『未来世紀ブラジル』ぐらい派手にやってほしいものなのだが、目的が違うのだ。あとで分かる。
 偶然出会った牢獄で怪人二十面相の顔の傷の話をする。何で知ってんだ?鳩は牢獄に面会に来ません。壁に貼られた指名手配ポスターを剥がす、という馬鹿なことを平吉こと金城武がする。子供の純粋性を表現するために、仲間の死に気づかない。純粋じゃなくてただの馬鹿。40分辺りから演出がつまらない人情話になる。
 松たか子を挟んだアクションは面白い。
 感圧センサー、レーザー監視、小型無線機と普通の世界と同じ。if世界という設定はなかったことになっているいい加減さ。見せ方も大掛かりで、アクションも頑張っているに、手抜きというのかぬるい部分が多数散見される。つまり、『未来世紀ブラジル』よりも『バットマン』や『スパイダーマン』のアメコミ映画の真似事をしたかったんだねえ。
 オチはどうでもいいじゃんという展開に。からくり銃も前フリしてください。とにかくオチの場面、金魚のフンのように長い。エンドロールも長すぎ。

オーディオ機器が多数出てくる、映画『野獣死すべし』

 タイトルは昔聞いたことがある村川透監督映画『野獣死すべし』(1980年公開)を観た。
 この映画、見たことあるなあと思ってしまった。あれは『蘇る金狼』でした。あはは、そのくらい映画の雰囲気がそっくり。
 カジノの中がスタジオっぽい。外人が時代を表している。引きの画で雨の中の格闘が長い。カジノの中で松田優作、銃乱射。演技演出がオーバー。
 松田の横にドライバー工具がある。なんで?取り立てて松田の性格や経歴が表現されるわけでもないのに、松田のシーンが長すぎる。
 銀行内、被せてくるモールス信号のようなSEの意味がわからない。
 20分過ぎてもこの物語がどこへ進むのかどのような映画なのか説明しない。退屈。
 演奏会場。通路側の席が開いている。二番目に小林麻美が座っている。当然彼氏が来ると思うよね。演奏も始まっているし、遅れてくる彼氏がすぐに座れるように通路側を開けておく。普通、人の行動ってそうだよねえ。なんと、当然、そこに松田が座るのだが。小林と松田は知り合いじゃない!なんで?映画的手法としておかしいでしょう。その後も、この演出に意味なし。
 松田の部屋、レコード店の試聴室と70年代スピーカーが出てくる。
 松田に会う刑事、偶然なんだなあこれが。なぜ、追いかけることになったのか一切説明なし。尾行していること教えるし。
 ウエイター役鹿賀丈史の切れる意味がわからない。そんなんじゃあ採用しないよ。
 急にフラメンコ、長い長い。わざわざ、人通りが多いところで射殺。ばれるばれる。部屋の中がすごく安っぽい。スタジオスタジオ。
 と欠点ばかり上げたので、良さそうな点も。
 岡本麗の裸と自慰シーンが取ってつけたようにある。
 松田と加賀の鬼気迫る表情はいい。
 雨、タクシーの中の松田と小林。ワイパーの音が切ない。小林の銀行内でのスロー映像は長いけどちょっといい。
 電車の中のロシアンルーレット。ここは見入った。
 95分ごろから意外な展開に。だからといって面白いわけではないし理解不能。
 この頃の角川映画は、取り上げる内容はいいのだけど、映画の出来としてついていけてない感じ。大味で、物語の整合性が破綻している。勢いは認めるけど、完成度は低い。

綿密な取材と群像劇、映画『ハッピーフライト』

 5月24日TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」のコーナー「週刊映画時評ムービーウォッチメン」を聴いていたら、矢口史靖監督の最高傑作はこれだと紹介していたので観た映画『ハッピーフライト』(2008年公開)。脚本も矢口。
 航空空港業務に関する描写が非常に細かい。空港内の野鳥を追い払うバードさん。管制レーダー室、菓子が飛行機の形になっていてそれをテーブの上にぶちまけると、地図の上で整列させてしまう描写。搭乗手続き時の客席の調整方法。パイロットが帽子を被る理由。飛行機をけん引する車両からの映像。タイヤ格納庫内部からの映像。機内食の案内の仕方。搭乗客からのクレームの種類。空港内見学者。主翼の揺れ。引き返す便が出た時の空港内の対策。などなど、いやはやこの映画を見るだけで空港内旅客機内部の仕事が理解できてしまうほどの見事な映像表現。矢口の綿密な調査と取材に舌を巻く。
 スチュワーデス内の対立、コクピット内の対立、地上勤務チーム内の対立、整備士内の対立、オペレーションコントロールセンターチーム内の対立、と前半部で対立を見せておいての、克服すべき困難を見せておいての、群像劇の収斂という見事な映画の進め方。各人に失敗をさせておいての名誉回復も準備されている。素晴らしい。
 60分過ぎ、エマージェンシーが宣言されてからハラハラさせる展開に。これまで観た旅客機や空港が舞台の映画の中で、この映画は機内やコクピットの映像が嘘っぽくなくてよく出来ている。エンドロールもムダにしない。お見事!

無駄な設定が多すぎる、映画『探偵はBARにいる』

 映画をランキングしているサイトの情報で観た橋本一監督映画『探偵はBARにいる』(2011年公開)。
【良い点】
・雪が本物。
・屯田兵、北方領土を返せという右翼崩れの暴力団、ジンギスカン、広大なロケ地、スノーモービルによるアクション、ボーイズビーアンビシャスというセリフなど北海道が物語とよく溶け込んでいる。
【悪い点】
・冒頭のアクションシーン。ギャグとかいらない。
・スローモーションが無駄で鬱陶しい。
・松田龍平の役が全くいらない。物語に何も絡んでいない。ただのお飾り。
・携帯電話を持たない探偵なんてありえない。納得させる説明もない。
・田口という放火犯の両親が射殺され、そこに大泉洋が駆けつける。そこで家の中を壊すほどの暴れ方をする。つまり悲しみの表現なわけだが、意味がわからない。この場面の前に、大泉は田口の父親に対してビルの上から逆さ吊りにするというリンチを加えて罵っていたはず。映画内でつじつまが合っていない。
・小雪に銃を突きつけて引き金を引くシーン。もう少し撃つぞっていう間を作るでしょう普通。もう引き金引いて空だよって言うし。なんの緊張感もない。
・電話相手と真相がわかって電車の中で暴れるシーン。また暴れている。ワンパターン。それしかできないのか演出と演技。何でそこまで怒り悲しむのか理解不能。
・ラストシーン。あのねえ、別に結婚式でなくてもいいでしょう。だって、結婚式の前に小雪の店で三人集まっていたじゃん。
【総評】
・もう、本当に無駄な設定が多い。大泉洋のキャラ設定と舞台は面白いのに、欲張りすぎて本質的な良さを殺している。

歩くシーンにちゃんと意味がある、映画『その男、凶暴につき』

 北野武監督作品として名前だけは知っていた映画『その男、凶暴につき』(1989年公開)を観た。
 暴力には暴力で答える刑事であることが、冒頭でちゃんと説明されている。
 警察署までの長い徒歩シーン。事件捜査となればカーチェイスと安易に考えがちだが、その後も徒歩シーンが多数現れる。
 警察署長に呼ばれてもなかなか席を立たない。性格描写と映画独特の間が表現されている。
 車の中のヘッドレストがちゃんと付いている。
 暴力シーンはひつこいほどの繰り返しで描く。
 ギャグは一切なし。
 赤い服を着た妹と出会うシーンなど、若干つながりがわかりにくいシーンあり。
 刑事ものの基本、現場とデスクの確執、ルーキーと先輩というバディものの面も織り込んでいる。
 殺し屋に追われて逃げるシーンでなぜ反撃しないのか説明がない。
 会話少なめ。無駄な演出をしない問答無用の暴力シーンはすごい。
 最後のシーンは予想してなかった。暴力もまた引き継がれていく。徒歩シーンがちゃんと生きている。
【2015/4/11追記】
 2015/4/10放送TBSラジオ「たまむすび」にオフィス北野代表取締役社長森昌行が出ていて、映画『その男、凶暴につき』の製作過程について語っていた。
 北野武のスケジュールを60日間開けるように深作欣二から要求された。テレビの収録で二週分撮れば一週間ずつ開けることはできると答えたが、それでは撮れないと深作は降りた。俺だったら同じスケジュールで一本ぐらい映画撮れると思うんだけど、と北野が言った。当時、配給会社にも異業種監督というブームがあった。よって、北野が監督することになった。自分の間と違うので編集も自分でするようになった。一作目は不満が残ったので、二作目『3-4☓10月』から北野組の母体が出来上がった。

幼稚、稚拙、いやデビルマンだ!映画『デビルマン』

 駄作として評判の那須博之監督映画『デビルマン』(2004年公開)を観た。
 子供、暖炉、明るい部屋。テレビドラマを見るようなビデオっぽい安っぽさ。宇崎竜童、恥ずかしいを表現する演技が新聞で顔を隠す。この時点で評判通りだということがわかる出来。
 デーモンに合体された父親というのが部屋の中に顔だけ。取り憑かれると「ハッピバースデー、デビルマン」。主要人物二人、若い俳優のセリフが棒読み。
 うひゃ~、この稚拙さたまらんなあ。怖いくらい前ふりのない行き当たりばったり。デビルマンの右腕決めポーズが全くかっこ良くない。
 いちいちボブ・サップが言葉で説明する。
 急に稲刈りする。デビルマンであることの腕の傷を見せるためだけの演出。観客にはなんの関係もない。監督自身のために作っているんだこの映画。
 戦争なのにデビルマンの家の周りだけ普通に生活している。
 デビルマンを護送するとき、普通カメラ側に向けないかなあ。別れのシーンなんだから。エッジの効いた監督のこだわりなんですかねえ。それともただ気が利かないだけか?
 何故かやっぱり日本刀がある。教会に生首おくかね。逆にさらし首になってないかあ。
 108分頃。岩の上にデビルマンからもどった不動明が身を横たえている。下半身がない。死を決意している。隣にはサタンこと飛鳥了。死を見届ける。カメラは二人の周りをぐるっとパンするのだが、、あれ了の影が移動するんですけど。陽の光は右側からあたっていて、カメラが移動すると影が逆に移動、ということは岩ごと回り舞台になっているってことですかあ。その影が出ているってことですかあ。それを消さなかったんですかあ。VFXがすごいって宣伝している映画なのにですかあ。
 この映画は映画を作るときにやってはいけないこと特集と見ればすごい映画かもしれない。邦画の映画監督を志す方は必見!

法廷画家という珍しい設定、映画『ぐるりのこと。』

 なんとなく観た橋口亮輔監督映画『ぐるりのこと。』(2008年公開)。
 性的会話があけすけ。だが、裸はない。リリー・フランキーと木村多江の会話が超長台詞。その後も、ワンカットの長いシーンがある。リリーは放送局に雇われる法廷画家という珍しい職業。法廷シーンと放送局内と家庭が描かれる。
 映画としては奇妙なテイスト。どちらかと言うとおっとりした俳優をキャスティングしておきながら演出、セリフが辛辣、殺伐としている。駄作にありがちな冒頭で説明しないという稚拙な感じではないけど、話がどこへ行くのかわからないので宙ぶらりんな心理状態に置かれる。
 後半、一応、リリーと木村の夫婦は危機を乗り越え前向きな生活をおくるのだけど、映画の殆どが殺伐としているだけに、「普通になったね」という、バイアスのかかり方が調整されたというだけでしかない。この映画の最大の欠点は、木村の精神状態を乱す妊娠、中絶の描き方が非常にわかりにくいこと。140分も使ってなぜここだけ手抜きなのか理解不能。
 リリーの力を抜いた演技がうまい。

多重構造による世界観を重視、アニメ映画『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』

 押井守監督つながりでアニメ映画『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984年公開)を観た。
 鳥の飛翔、戦車、光を反射する眼鏡のレンズ、夜の明るいショーウィンドウ、口語調のセリフ回しなど押井節ともいえる記号が散りばめられている。背景と人物のズームアップを描くときに、背景と人物との拡大率に差を設ける、カメラレンズの効果を取り入れた表現、だまし絵のような効果、水の表現、など印象的なシーン多数。これまでかなり押井作品を見てきたけれど『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』が最もストレートでシンプルに表現していると感じた。
 物語も登場人物の感情や動きを描くというより、環境設定のディティールを詳細に描いた上で、登場人物を遊ばせるという世界観重視の作り。夢の多重構造というある意味やりたい放題な物語なので、空間に浮かぶ都市、フランケンシュタインのパロディ、SF、らせん構造の中での会話などなど、溢れ出るアイディをぶち込んだという感じがする。
 「好きな人を好きでいるために自由でいたい」といった名言に見せかけた男の勝手な願望というあたるのシリアス場面も面白い。

静謐感は向上、戦闘シーンがもう少し欲しい、アニメ映画『機動警察パトレイバー2 the Movie』

 1はすでに観たのでということで、押井守監督アニメ映画『機動警察パトレイバー2 the Movie』(1993年公開)を観た。
 人物の中に両津風なキャラがいる。ミサイル搭載カメラの映像。着弾前にちゃんと上昇して着弾する。テレビ画面からの光を反射するメガネ、夜間のビルから漏れる光、など逆光の使い方が印象的。
 何気ない風景。押井風にいうとダレ場にかぶせる日本的平和論という抽象的会話。機械が人の動きを観察している車載カメラ映像が不気味。
 日常生活風景の中に置かれた戦闘兵器が静謐。広場の雪の中の戦車。ウインドウの前に佇む兵士。
 戦闘シーンは前、中、後とあるものの印象としては少なめ。
 戦後間もない時期に作られた『ゴジラ』が米軍の影すら出てこないのに、現代や未来を描いた『亡国のイージス』『機動警察パトレイバー2 the Movie』に米軍がちらちらするというのは、映画関係者の心意気の違いというのが出ているのかな。

荒ぶる神、映画『ゴジラ』

 TBSラジオ「たまむすび」のコーナー町山智浩の「アメリカ流れ者」でハリウッド2作目『GODZILLA』について、映画の出来が素晴らしい、と話していた。あ、ゴジラってちゃんと観たんだっけと本多猪四郎監督映画『ゴジラ』(1954年公開)を観た。
 4:3、モノクロ。今見ても、冒頭部のゴジラの咆哮と伊福部昭の音楽はドキドキする。
 宝田明が若い上に、目つきが鋭い。河内桃子のスタイルが今のモデルにも負けない。志村喬、いつもおじいちゃん役。代議士役で菅井きんがでている。
 漁船の被曝、長崎からの疎開についての会話、アナウンスが大本営発表と同じ調子などなど、太平洋戦争、原爆、水爆に対するアンチイメージにあふれている。水爆実験によって蘇った古生物。その生物によって都市が破壊される。現代文明批判とアミニズムの象徴、帝都破壊というスケールのデカさ。1954年の映画がここまでやれているのに、現在の邦画は、と考えてしまう。米軍を出さないのは、敗戦国の気概か。

セックスサイボーグゆみちゃんの恐怖、映画『西陣心中』

 なんの事前知識もないまま見てしまった高林陽一監督映画『西陣心中』(1977年公開)。
 素晴らしい。完全に期待を裏切られた、いい方に。
 水面、捜索している船、リズミカルな音。無理心中に巻き込まれそうになった女野沢ゆみ(島村佳江)にたいして刑事が世話を焼く。ここでゆみの性格設定が示されている。ゆみは西陣織に異常な興味を持っており、西陣織の商店に織り子として就職する。なぜ西陣織なのか、固執する理由は最後まで説明されない。
 車の中のゆみをフロントガラスごしに撮る映像がすばらしい。女の顔を怖く撮る技術が絶品。フェロモンを嗅ぎつけるかのようにゆみの周りに男たちが群がる。近寄る男を食っていくゆみ。ジャケットの下が突然ノーブラ、というシーンにドキッとする。光の加減を微妙に変えたおっぱいシーン多数。織物関係者3人との肉欲シーン、SEがゆみの好きな男の織る織り機の音。女主人のとどめを刺すまでの引張もすごい。
 なんと、最後のオチは全く予想できなかった。このシーンで単なる女の物語でもエロ映画でもないことが示される。ATGすげー。
 無表情で男を漁るゆみちゃんのキャラクターは良く出来ている。『リング』の貞子にも負けないキャラ立ち。このまま埋もれさせるには絶対に惜しい。三池崇史監督あたりが『西陣心中』リメイクもしくは2を撮ってくれないかなあ。

若い女が遺産を手に入れようとするが、映画『金髪の草原』

 なーんとなく見てしまった犬童一心監督映画『金髪の草原』(2000年公開)。
 冒頭からセリフが辛辣。ヘルパーが介護相手の老人を猿呼ばわり。映像はよく見ると独特。急にアップになったり、カメラ目線があったり、画面分割、固定カメラで撮るべきところを微妙に画面が揺れていたり、稚拙な感じなのだけど、計算なのか?喫茶店、男女4人のべしゃりのシーンは独特。日常会話に近い乱雑なセリフ回し。
 伊勢谷友介が老人役。丸坊主でそのまんま特殊メイクなし。この設定は自分は若いと思い込んでいる老人という記号なわけだ。観客は若い伊勢谷を見るつど「あ、この人物は自分を若いと思い込んでいる老人だったね」と再認識する映画的手法。
 共演者が見えないふり見ないふりをしているといえば『ハサミ男』『パーマネント野ばら』と同じともいえるわけだが、この二つは途中でなかったコトにする汚い手法だけど、伊勢谷は老人であるが外観が若いという設定を最後まで守っている。
 人は老いると子供に還るという言葉がある。つまりボケである。老人役を普通に高齢の役者が演じれば、それはただの認知症とヘルパーとの介護残酷物語であり、別な映画になる。そこを伊勢谷がやることで回避しているわけだ。
 ミュージカル映画は映画内で急に歌い出すことによって観客への感情移入のハードルを高めている。映画という虚構の上に出演者が歌うという非日常という虚構も受け入れないといけない。
 『金髪の草原』でも構造は同じで、映画という虚構の上に伊勢谷が老人であるという虚構を若い伊勢谷を見ながら感情移入しなければならない。これはかなり高度な映画鑑賞技術が要求される。
 しかし、見方を変えるとまた話は面白いものになる。実は、伊勢谷は本当に若いまんまであり、周りの人々が伊勢谷を陥れようとして老人扱いしているというサスペンス設定である。だからこそヘルパーの池脇千鶴に影があり、女友達が遺産目当ての結婚を提案する。
 なーんてね。ま、いろいろ撮影とかに独特なセンスを感じるものの70分辺りから物語は失速。最後の姉弟の関係も付け足しのようで意味不明。ファンタジーよりも『レベッカ』風なサスペンスを期待していので。

邦画のこじんまり感を実感、映画『苦役列車』

 西村賢太が原作ということぐらいは知っていた山下敦弘映画『苦役列車』(2012年公開)。
 高良健吾の生まれが九州という設定。『横道世之介』と同じ。前田敦子の隣の部屋に行くと老人がいる。『クロユリ団地』と同じ。邦画はワンパターンに陥っているなあ。すごい狭い世界でグルグル回っている。俳優もグルグル回っている。内容だけでなく邦画は貧相になっている。
 クズ人間の役を森山未來がやっている。底辺を徘徊しているからクズなんじゃなくて、同じ間違いを何度も繰り返すからクズ。ラストはファンタジー的映像の後、初めて原稿を書くシーンが出てくる。何度も同じ間違いを繰り返していたのに、なぜ急に向上心が出てきたのか理由は不明。そこを描くべきなのに。

企画製作吉本興業、映画『ゴーストライターホテル』

 何気なく見てしまった伊東寛晃監督映画『ゴーストライターホテル』(2012年公開)。
 冒頭、ホテル外観が安っぽい。ホテル内部もこじんまりしている。幽霊となった文豪たちと原稿を仕上げるというこじんまりした作り話だけに、このへんのディティールは力を入れるべきだったのではないか。主人公と思われる男のナレーションが下手。
 吉本興業がかんでいるだけにお笑い芸人多数出演。演技ではなく芸を披露している登場人物が散見される。テレビで見られるギャグを金を払ってわざわざ映画館で見せるということに価値はあるのだろうか。
 屋上のシーンで青い空が綺麗。演技がうまい芸人もいる。

角川映画に当たりなし、映画『蒼き狼 地果て海尽きるまで』

 てっきり井上靖著「蒼き狼」の映画化だと思って見てしまった澤井信一郎監督映画『蒼き狼 地果て海尽きるまで』(2007年公開)。原作は森村誠一とのこと。森村も書いていたんだ。
 映画冒頭から、女(ホエルン役若村麻由美)を馬車ごとあっさり置き去り。騎馬戦もしょぼく、映画のつかみなのにこの手抜きがまったく理解できない。
 モンゴルの物語なのにすべて日本語。少年たちのセリフ回しがものすご~く平板でびっくりする。
 ボルテ(菊川怜)、あっさり連れ去られる。あのー、略奪品としての女の葛藤みたいなものも隠れテーマとしてあるわけだよねえ。それでこの事務的な場面展開。それとも略奪品だからモノ扱いという皮肉ですか?そんなのいらんわ。
 うーん、女兵士クラン(Ara)は助けるんだあ。結局、カッコつけてやることやるじゃん。なんだそりゃ。クラン、騎馬の姿が華奢すぎて全然似合わない。
 83分からの騎馬戦は『天と地と』にならぶ物量。ただし、一部CGあり。
 ジュチ(松山ケンイチ)の戦闘シーンがまったくない。頑張っている姿を見ていないので、死んでも悲しくない。死の場面、反町隆史の芝居がすごい大根にみえる。
 バカ映画とまでは言わないけど、ドラマの演出がものすごく平板なため、多数のエキストラと広大なロケ地を使った映像が生かされていない。だから、雄大な物語も身内の痴話喧嘩にしか見えない。
 エンドロールが長いな。原作井上靖でなくてよかったよかった。

リマスター版を初めて観た、映画『羅生門』

 監督黒澤明の作品はいくつかみているけれど、それは遠い昔の話。久しぶりに見なおしてみるかと思ったらリマスター版が出ていた。で、映画『羅生門』(1950年公開)を観た。
 「本作『羅生門』は2008年 角川文化振興財団並びにフィルム・ファウンデーションの助成を受け、アカデミー・フィルム・アーカイブ 東京国立近代美術館フィルムセンター 角川映画株式会社が共同で復元を行いました。」と字幕が出る。2003年に東宝「THE MASTERWORKS シリーズなど各配給会社からDVD発売時に修復されたはず。2008年ということはブルーレイ発売に合わせデジタル修復が行われたのだろう。詳しくは文末のリンク先をご参照ください。
 4:3、モノクロ。絵の中のノイズも傷も全く気づかない。動きも滑らか。音に関して途切れる部分はある。残念ながらアスペクト比は4:3。当時のマスターとかは残ってないのだろうなあ(オリジナルネガは失われている)。
 (2014/10/10追記 黒澤明は1950年代後半まではスタンダードサイズで撮っていたらしい。なので『羅生門』はスタンダードサイズで正解なのだ。いやはや不勉強で恥ずかしいことを書いてしまった。)
 映画については、もはや語り尽くされているはずで付け加えることはなにもない。2014年の眼で見ての気づいたことを少し書く。
 森のなかの巨木。今の映画では見ることができないロケ地。木漏れ日が印象的。夫の肩越しの女の顔。女の表情にかぶせるボレロ。三船敏郎の真剣な顔からのおどけた表情と仕草。両足で飛び跳ねる演技と三船節健在。などなど見るべきシーン多数。
 物語としては、羅生門の下で語るメンバーが3人。森のなかの回想として語られるメンバーが3人。対になっていることに気づいた。
 回想による同一の物語を多人数が語るという形式は多視点再現と同一の構造ではある。ただ監督内田けんじや『桐島、部活やめるってよ』に見られる多視点は、ほとんど同じ場面を再現しての別カメラでの視点という点で進化はしている。ただ、技術的には進化しているけど、だからといって感動するとも限らない。
 証言を訊く検非違使側の映像は出てこない。検非違使は観客の視点であり、証言はカメラ目線で語られる。これによって真相がわからない事件を観客自身に語られているように感じられる。うまい作り。証言の行われる中庭は証言者を手前、奥に志村喬と千秋実の二人を配した画面構成。ここはオリジナルのワイドアスペクト比で見たいところ。まったく残念。
 最終的に死体第一発見者の志村によって語られるのだが、その内容は男は男らしくなく女は女らしくないという皮肉の効いた暴露。更にもう一段落ちがあってと抜かりがない。
 映画監督になるということは大変なことだと思う。だって黒澤明と比較されるんだよ。地獄だよねえ。まあ、それに気づいていない頭が平和な監督が多いけど。

「Phile-web インタビュー フィルム復元者と企画担当者が語る「羅生門デジタル完全版」のすべて」

字幕を多用する映画は駄作、映画『アキハバラ@DEEP』

 バナナマンが話題にしているので見てしまった源孝志監督映画『アキハバラ@DEEP』(2006年公開)。バナナマンが話題にしているのはドラマ版の方で映画とはなんの関係もなかった。
 登場人物にいちいち字幕の説明(渾名、年齢、年収)が付く。すでに嫌な予感。『リリィ・シュシュのすべて』『阪急電車 片道15分の奇跡』で痛い目にあっている。字幕を多用する映画に名作なし。
 37分過ぎ、やっと目的が示される。男4人女1人で会社を立ち上げ、新しい検索エンジンを開発したいらしい。
 映画として観客への方向性の提示が遅すぎる。『県警対組織暴力』を見てほしい。あの冒頭のワンシーンだけで関係性が全て示されている。映画の冒頭は登場する人物の達成すべき目的は何なのか?誰がどのように成長するのか?が示されなければならない。もしそれがないなら、それら物語性を凌駕する「何か(芸術性、新しい撮影技法、演出、俳優、演技etc)」がその映画にあること。
 で、検索エンジン開発物語かと思っていると、プログラムがPCごと盗難に合う。で、奪還作戦に話が移行。うーむ、なにがメインなのかなあ。
 で、まあ、5人が何かしらの努力をして奪還作戦に望むのだが、はっきり言えばどうでもいい。
 なぜ投げやりな態度になるかといえば、検索エンジン開発の姿が、パソコンの前で飯を食う姿の早送りを見せるだけ。これがプログラム開発を一生懸命やっているという絵らしい。更にその開発された検索エンジンがどのようにすごいかが具体的な検索結果で見せてくれない。つまり全て座り作業やセリフでしかないので、映像として何も出てこないのだ。だから、観客はなんの感情移入もわかない。だから、そのプログラムが極悪な大手に盗まれようが奪還しようがなんの感慨もない。
 藤圭子の「命預けます」も付け足しで不要。寺島しのぶが格闘技の対戦相手というのも説得力まるでなし。
 ビルを出てないのに奪還を喜んでいるし、最後のオチがちょーつまらない。

だいじょうぶ?村上龍、映画『だいじょうぶマイ・フレンド』

 エンディング曲は知っていたけど映画は未見だった村上龍原作脚本監督映画『だいじょうぶマイ・フレンド』(1983年公開)。
 男女のダンスシーン。かなり長い。ダンスをしているのは広田玲央名だとわかる。まったく意味のない銃撃がおこり、画面左にはける広田。背景に巨大ヌードの広田の合成。壁画か巨大スクリーンを見ているような錯覚を起こす。ここは素晴らしい。広田のヌードも綺麗。だけど、ここだけ。後はもう、、
 SFらしい。物語はただただ停滞。イメージ映像ですらない。何がしたいの?レベル。飛んでいるらしいけど、ハンググライダーの上に吊り下げている鉄骨が見えている。とほほ。下手というより杜撰(ずさん)。映像も馬鹿だけど会話も馬鹿。浜辺の男女が「日本一疲れやすい世代なんだよなあ」。無意味すら通り越している。ボートとヘリの追跡劇がまったくスピード感なし。敵のバイクに追いかけられているのにジムニーの後部座席に乗っているピーター・フォンダが下向いている。疲れたのかなあ(笑い)。もう後は書く意欲すらわかない。
 出演者、タモリ一義、小松政夫、研ナオコ、武田鉄矢、根津甚八、音楽監督、加藤和彦、音楽作曲、来生たかお、桑田佳祐、坂本龍一、高中正義、これだけのメンバーが協力したわけだけど、名前がクレジットされているのが恥ずかしいでき。
 唯一この映画に価値があるとすれば、広田の映像が多いことかな。バレーの素養があるのか、ダンスシーンは無意味に多い。テーマ曲も歌っている。「森田一義アワー笑っていいとも!」のテレフォンショッキングに出ていた広田レオナがタモリとすごく親しそうに話していたのはこの映画で共演していたからなんだ(ま、芸能人の私生活までこちらが忖度することではないわけだが)。
 ラストシーンは、雪のつもりなのかな、紙吹雪が舞っています。最後まで、手抜きはないな、龍!

BCL限定、映画『波の数だけ抱きしめて』

 タイトルだけは前から知っていた馬場康夫監督映画『波の数だけ抱きしめて』(1991年公開)を観た。
 冒頭、モノクロ、中山美穂の結婚式。松任谷由実の曲に合わせて映像が作られている。
 回想によって海岸沿いのミニFM局が舞台であることがわかる。砂浜に立つ一軒家がスタジオ。スタジオの中の備品にナショナル製クーガー2200がある。織田裕二が肩にぶら下げているのはソニー製スカイセンサー5900と思われる。FM受信にスカイセンサーじゃなくても、とは思うが見栄えがいいということでBCL受信機の登場なのだろう。BCLには眼の保養として見続けることはできる。ただ、スタジオに遮蔽遮音壁がないというのはいくらなんでもな設定。
 ラジオ局が舞台の映画としては他に『ラヂオの時間』しかしらない。後、小島聖の出ている『絶対恐怖ブース』(未見)もそうかな。
 ミニ放送局ながら中継局を人海戦術で増やして放送を遠くまで届けるのが目的。そのための男3人、女2人の悲喜こもごもといった普通の目的達成物語なのだが、他ではあまり見ない展開もある。
 まず、なんとこの集団内で最後までカップルは成立しない。最後に再会シーンが準備されているのだが、そこに中山はいない。他のメンバーはどういう状況なのかがほとんど説明されない。
 更に恋愛がダメなら、それと引き換えに物語内のミニFM局の目的は達成したのかというと、これまた失敗している。うーむ、なんとも潔いというのか、現実的というのか。何かしら観客にサービスするもんだけど、ここまで何も達成しない映画というのを初めて観た。
 映画的には、豪雨の中、二つのカップルの進行状況を交互に撮すカットは良く出来ている。
 相原勇と見間違えた色黒で細身の松下由樹が出ている。松坂慶子と松下は芸能界びっくりシルエット。
 織田裕二がものすごく優柔不断な役。織田さえしっかりしていればすべてうまく行っているわけで、リーダー不在のダメ集団物語と言い換えることもできそう。

長澤まさみがオーディションで落とされた、映画『スウィングガールズ』

 NHKラジオ第一「すっぴん」に映画監督矢口史靖が『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去(かむさり)なあなあ日常~』の宣伝のために出ていた。そこで過去作品『スウィングガールズ』のオーディションについて話していた。オーディションの条件は三ヶ月間の楽器練習ができることなので、結果的に暇な新人ばかりを集めたとのこと。長澤まさみも応募していた(矢口は映画名を断言しなかった)ようなのだが落としたとのこと。落とした理由は言っていなかった。
で、見ることにした映画『スウィングガールズ』(2004年公開)。
 演技が作り過ぎな感じ。『ひみつの花園』を観ただけに、もっと観客を突き放した演出だと思い込んでいたけど、やはり、予算と関係者が増えるとこういう作りにしなければOKが出ないのだろうなあ。痛し痒し。
  面白かった場面は、横断歩道の音、バスがバックするときの警告音など、街中の生活音からスイングすることに気づく点。後、上野樹里の左足がいつもリズムをとっていること。奇妙な方言を使っていること。雪の風景が美しいこと。
 最後の大団円は一応のカタルシスはある。ただ、ドラムパートの一部、叩いてない音が出ているような気がするのだが。矢口はCGよりも実写の方が楽と発言しているので、アテレコはないという前提で観た。オーディオ的にはオンな感じで、ホール感はない。
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グブリー川平(かびら)
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